歴史遺産などを、残された資料や図面から再現することを「復原」という。近年、その復原が低調だ。いったいなぜなのか。 東京駅の赤レンガ駅舎は、1914(大正3)年に開業。日本を代表する建築物のひとつで2024年から発行される新1万円札の裏側にもあしらわれる。 意外に思われるかもしれないが、東京駅は品川駅や上野駅、新宿駅よりも開業が遅い。それでも2003(平成15)年に重要文化財に指定されるなど、東京駅の赤レンガ駅舎は格別な存在だった。 その赤レンガ駅舎は、1945(昭和20)年に空襲でドーム型屋根を焼失。東京駅の戦災復興を担当した松本延太郎は、建材が不足しているために応急処置的にドーム型の屋根を八角形にして再建したと回顧している。 松本は戦後の混乱が収まる頃に屋根をドーム型へ戻すと思っていたようだが、八角形の屋根はそのままにされた。赤レンガ駅舎が重要文化財に指定されたときも、屋根は八角形のまま