人間として生まれて来た哀しみを描くことが小説の重要なテーマとしたら、本作品はそれを見事に描いている。“無知は犯罪に及ぶ要因”という言葉があるが、この作品の一方の主人公である大学生は、無知の典型である。その無知は、勿論、彼等にも責任があるが、それ以上に、このように無知な若者を生み出した社会構造と、優越、業といった人間の醜さが、本作には鮮烈に描いてある。さらに見事なのは物語の結末まで、この無知を主人公と家族たちが理解ができない描き方をしたことである。 (姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』文春文庫、2021) おはようございます。引用は、文庫の巻末に収録されている、伊集院静さんによる選評(第32回柴田錬三郎賞)より。姫野カオルコさんの『彼女は頭が悪いから』を読んでいるときに、小山田圭吾氏の「いじめ自慢」のニュースを耳にしました。社会構造が変わらないためでしょうか。構図が似ているなって、そう思いま