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ブックマーク / kasasora.hatenablog.com (3)

  • 雑で速いやつに対する説諭 - 傘をひらいて、空を

    疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。弊社ではそのために些末な打ち合わせもオンラインでおこなわれ、皆が慣れてきた今となってはリアルタイムの共同作業も気楽に実施されている。日は上司からの資料レビューであった。 上司:急ぎでイレギュラーな仕事やってもらっちゃってごめんね わたし:いえいえだいじょうぶです 上司:こういう差し込みの仕事、ガッてやってバッて出してくれるのほんと助かる わたし:いやあ、この程度でよろしければ 上司:あのね、できればこの程度じゃなくしてほしい 上司:あなたの仕事はいつもスピーディで対応も柔軟で素晴らしい。でも雑 わたし:あっそれが題ですね 上司:うん。赤字のところ見ておいて。とくに数字の誤字は致命的だからね。あと図の作りとレイアウト。せめて余白を左右対称にしてほしい。総じて雑 わたし:承知しました。赤線ありがとうございます。すごく直し

    雑で速いやつに対する説諭 - 傘をひらいて、空を
  • 傘をひらいて、空を

    仕事やめたんだあ。 友人が言う。皆が一斉に失業保険について質問する。もうやったか。自己都合退職でももらえる。手続きはこう、必要な書類はこう。 その場にいる全員が失業保険の申請をしたことがある、または申請方法を調べたことがあるのだから、就職氷河期世代とはせつないものである。資格職外資大学院入りなおし中途採用公務員、そんなのばかりである。 しかし、五十近くともなると職が落ち着き、転職がぐっと減った。だから仲間うちで仕事を辞めたという話が出るのは久しぶりなのである。 退職したという友人は、失業保険ねえ、とつぶやく。めんどくさい。 皆がいっせいに、もったいない、と言う。もらえもらえと言う。 しかし、よく考えればこの女には昔からそういうところがあるのだ。 彼女はふだんはパワフルだ。早くにできた子どもが二人いて、若くして配偶者を亡くし、親類や友人や、もちろん自分の能力と時間も含め、手持ちのリソースをフ

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  • 「優雅な生活が最高の復讐である」 - 傘をひらいて、空を

    久しぶりにおばさんの家に行くことになった。おばさんというのは叔母さんではなくて、伯母さんでもなくて、赤の他人だ。十代の終わり、ファミリーレストランでアルバイトをしていて、それで知りあった。私は皿を運び、彼女は皿を洗っていた。おばさんの家はほとんどお屋敷といっていいような構えで、私は一年のあいだ、週に一度そこでおばさんの子に勉強を教え、おばさんのごはんをべた。おばさん親子の部屋は離れで、女中部屋、とおばさんは呼んでいた。息子は小柄で無口で坊主頭の中学生だった。 おばさんがごちそうをつくってくれたのは私のためで、勤め先のある大阪から来た息子は近くで私と少し話して今日はホテルに泊まるのだという。あの人にはあした寿司わせるんで、と息子は言った。もう小さくはない。全長や体積は男性の平均を下回るのだろうけれども、骨のかたちも顔つきも物言いもすっかり大人だった。話の流れで、おばさん、なんか可愛いから

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