2019年に起きた京急線の踏切事故の背景にある本社と現場の分断の実態について、前回の記事『「京急踏切事故」の裏にある、元乗務員たちが語る驚きの問題とは』で書いた。だが、京急の問題はそれだけではない。今回は乗務員の過酷な労働環境と相次ぐ退職者の問題について取り上げる。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也) 【この記事の画像を見る】 ● 他社への流出が相次ぎ 乗務員は1割が欠員 京浜急行電鉄は駅の信号や線路の切り替え作業などの運行管理を手作業で行う「人間優位の企業文化」を持つことで知られる。多くの鉄道事業者がコンピューターで制御している中、京急が手作業にこだわるのは、10年以上の運転経験を持つ経験豊富なベテラン社員がトラブル時に臨機応変に対応するためだ。 この結果、国土交通省が2020年2月に発表した東京圏の鉄道路線の遅延「見える化」でも、1カ月(平日20日間)の遅延証明書発行枚数が5.7枚(20