埼玉新聞社で広告営業をやっていたころ、選挙広告というのも重要な分野だった。たしか埼玉県議会議員選挙のときだったと思うが、旧浦和市内を上司と車で走っていて、ある候補者のポスターが非常に目についたことがある。 「○○さんのポスター、すいぶん多いですね」 そう話しかけた僕に上司はこう答えた。 「駄目だよ、電柱ばっかりだから」 薄いベニヤ板や厚紙で裏打ちされた宣伝物を紐や針金で電柱に固定した、いわゆる「捨て看(板)」は、軽犯罪法や条例に触れるものだ。だから、あまり日中堂々と張られることはなく、取り付けは夜中に行われることが多い。一応、それぐらいの知識はあった。 上司が言うには、電柱への捨て看ポスターは、誰にも了承を得ず付けていくものだから、数は多いし、たしかに視覚的宣伝効果はあるが、その地域でその候補者への支持が多いということにはならない。1軒1軒、了承を得なければならない商店や民家、ビルの壁など