本書は大学入試に使われた哲学の現代文を使って,哲学的な考察を行うというコンセプトの本である。そこには様々な「誤読」が介在する。すなわち,出題者自身が本文を読解できておらず,したがって全く頓珍漢な設問になっているもの(第1章)。出題自体は適切であったが,内容が高度すぎて予備校の解答速報や参考書でさえ適切な読みができていないもの(第2章)。本書の筆者である入不二氏自身がある種の誤読をしてしまい,文章の意味を今ひとつとれなかったもの(第3章)。そして本文自体に矛盾を抱えており,結果的に複数の読みが成立しうるもの(第4章)。この4章で構成されており,「入試の現代文には様々な誤読が介在されてしまう余地がある」からこその『哲学の誤読』という書名になっている。 私が本書を読もうと思った理由はほとんどの読者にはお察しの通り,本書のコンセプトの一部がまんま拙著の現代文版であり,事実,受験現代文をメッタ斬りに