太平洋戦争とはどのような戦争であったか。なぜ日本は米国と戦争をしたのか。こうした問いに答えることは、容易でもあると同時に困難である。 容易というのは、すでにレディメードな解答が用意されているからだ。だがこの容易さは、どれほど学問的な装いをしていても、連合国軍総司令部(GHQ)が指導した戦後神話の影響を受けているのではないかという疑念が伴う。なにより「大東亜戦争」という呼称が上書きされている。もっともこの呼称は「支那事変」を含めていると見てよいこともあるだろう。 さらに戦後神話は近年では、太平洋戦争そのものの意味合いさえ薄め、「十五年戦争」的なアジア侵略を際立たせている。軍国主義日本といった思考の枠組みが優先されるからだろうか。「日本は戦争をすべきではなかった」から演繹されたような光景にも見える。 困難であるとすれば、戦後神話を除いたとき、太平洋戦争がどのような光景に見えるか、と問うことだ。