八月六日は言うまでもなく広島へ原爆が投下された日である。既に何度も書いたことであるが、私の命も残り少なくなって来たし、もう原爆を実際に見た人も少なくなってしまったので、くどいようだがもう一度書いておきたい。 当時私は海軍兵学校の生徒で、広島から南へ約20キロ離れた学校の生徒館にいた。その日は朝から雲ひとつない晴天であった。午前8時からは自習時間で、各分隊の自習室で本を読んいた。自習時間が始まって間もなく、8時15分に全く突然に部屋の窓ガラスにピカッと白い閃光が走った。 何だろうと不思議に思っていたら、やがてドカンと言う地響きがして部屋が揺れた。咄嗟にこれは空襲だと思って、皆で部屋を飛び出し、外へ出た。そこで目にしたのがあの原子雲であった。ムクムクと空高く伸びていった原子雲は生涯忘れることが出来ないものとなった。 これこそ原子爆弾であった。 その時にはまだ広島であのような壮絶な地獄が展開され