<この国はどこへ行こうとしているのか> 自殺者が年3万人を超える日本。10年間で人口30万人規模の都市が消滅した計算で、「生きづらい」どころか、「生きられない」との悲鳴も聞こえる。人口10万人あたりの自殺者数は、先進国でもトップクラス。自殺大国の行く末は--。3回シリーズでお届けしたい。【山寺香】 ◇肯定され人は生きる 文化人類学者の上田紀行さん(50)は、自殺者が相次ぐ原因を、経済的不況より「生きる意味の不況」にあるという。どういうことなのか。読み解くヒントを求め、東京工業大の研究室を訪ねた。上田さんはにこやかに迎え入れ、ゆっくりと説明を始めた。 「人は意味に生きる動物。自分がやっていることの意味から見放されたら生きることができなくなってしまう。目に見えるセーフティーネットは必要だが、目に見えない人の内面の問題を考えていかないと、本当の自殺対策にはならない」 日本の自殺者は統計を取り始め