手元に15枚のイラストがある。赤や黄色など数種類の色鉛筆を使って色鮮やかに描かれた鯉と龍。鉛筆1本で濃淡を付けた人物画。筆書きの牡丹の花が添えられた年賀状も届いた。繊細で精緻。どれも彼が拘置所で描いたものだ。 絵を同封した理由は手紙に書かれていた。 〈私は人間性が未熟であり容姿も歪な為に、人を不快にすることもあると思います。せめて少しでも奇麗な絵を描くことで、私の考えをお伝えする助力になれば幸いです〉 彼は「美しさ」に対する強い執着と、自身の容姿への強烈なコンプレックスを隠さない。その感情を決定付けたトラウマとして挙げたのが、事件を起こす3、4年前のハロウィーンでの出来事――「パンダ事件」だった。 パンダの着ぐるみで外を練り歩くと、すぐに周囲に人だかりができた。経験したことのない状況に戸惑いながらも高揚したという。だが、かぶり物を脱いだ途端、波が引くように人はいなくなった。 「着ぐるみの中