私たちは生まれてこないほうが良かったのか? 人生において何か困難に直面したとき、生まれてこなければこんな苦しみを味合わなくてすんだのに、という気分にとらわれるのも不思議ではない。人間は生まれてこないほうが良いと考える立場の登場は古代ギリシャにまで遡ることができるが、それを哲学者デイヴィッド・ベネターが「反出生主義」として議論の俎上に載せたことで、近年急速に注目を集めている。本特集は現代の反出生主義について、感情的な応酬のみが注目されがちな現状を問い直し、国内外の議論をそのテーマの多様性も含めて紹介する。 【目次】 特集*反出生主義を考える――「生まれてこないほうが良かった」という思想 【討議】 生きることの意味を問う哲学 / 森岡正博+戸谷洋志 【私たちの生に未来はあるか】 天気の大人――二一世紀初めにおける終末論的論調について / 小泉義之 生に抗って生きること――断章と覚書 / 木澤佐