「僕は子供が苦手だったが、自分に子供ができて『得意』になった。他の子を愛すために、特定の子への愛を一度、触媒にしなければならなかった。特定の者への愛は、他への愛と矛盾しない」撮影・高橋はるか 社会学者で京大教授の大澤真幸さんが15年の歳月をかけて記した大著『ナショナリズムの由来』(講談社)が、学術書としては異例の売れ行きを見せている。5000円(税込み)と高価ながら、発売4か月で3刷り6500部。なぜ今も、ナショナリズムは人々の心をとらえるのか。大澤さんの話は、現代のナショナリズムの実情から、我々がこれから目指すべき「愛」の形にまで及んだ。(村田雅幸) 「無関心」と「多文化尊重」横断的見地を ナショナリズムやナショナリティー(国籍)が、いかに人々の心に染み込んでいるか。それを知ることはそう難しくないという。「自分とは何か」と考える時、「男」「女」という性別の次に、「日本人」という言葉を思い