*フーコーの「ネオリベラリズム」観 フーコーが「新自由主義は古典的自由主義への回帰ではない」と断じる理由について考えるためには、オルドリベラリスムスなど大陸ヨーロッパのそれではなく、アメリカ合衆国、つまりはシカゴ学派経済学についてのフーコーの見解を見るにしくはない。私見ではそれはただ単に「19世紀の古典的自由主義と、20世紀の新自由主義とがいかに異質か」にとどまらず、古典派経済学と新古典派経済学とのあいだに横たわる断絶に対する一つの興味深い解釈である。彼はとりわけ「人的資本」概念を理論経済学における重要概念の地位に押し上げたセオドア・シュルツとゲイリー・ベッカーにとりわけ注目する。 長くなるが引用してみよう。 シュルツやベッカーのような人は次のように言います。結局のところ、人々はなぜ労働するのであろうか。彼らが労働するのは、もちろん、賃金を得るためである。ところで、賃金とはいったい何だろう