ドイツ、テューリンゲン州の小さな町、テマールは、どんよりとした灰色の空に覆われていた。2017年7月15日、ここ10年のなかで国内最大の極右ロック・フェスが開催されたのだ。開場前にもかかわらず、6000人ものネオナチがテマールに集結していた。「そんなイベントに割く時間はない」とばかりに太陽は身を隠していたが、カメラマンのザラ・レナート(Sarah Lehnert)と私は、そのイベントに時間を割こうとしていた。しかし、会場に向かう道で渋滞にハマってしまった。会場に近づくにつれ、車の動きは遅くなった。 私たちの車の両側を、何百人もの男たちが会場に向かって歩いていた。皆一様に、ヒトラーやナチズムを称賛する、激しいスローガンが書かれたシャツを着ていた。スローガンは、たとえば〈Wer A sagt, muss auch Dolf sagen〉(〈A〉といったら、〈Dolf〉と続けろ:ヒトラーのファー