虚構の美学国文学演習ＤⅠ 西田谷 洋 虚構の美学：太宰と三島 １ はじめに Ａ ロマン主義とポストモダニズム 1)ロマン主義 ロマン主義の底流に流れているものは、内面性の重視、感情の尊重、想像性の開放といった特性であり、好まれる主題としては、「異国的なもの」「未知のもの」「隠れたもの」「はるかなるもの（特に、自分たちの文化の精神的な故郷、古代文化）」「神秘的なもの（言葉で語れないもの）」「夢と現実の混交」、更には、「憂鬱」「不安」「動揺」「苦悩」「自然愛」などを挙げることができる。 中世的秩序の解体後に自我・共同体を基礎づけるためにブルジョア社会とは異質な根拠を求める 自我と共同体が根拠付けられる絶対的、超越的なものへの憧憬 近代的理性に基づくブルジョア社会／理性の他者が開示される美的世界 2)ポストモダニズム モダニズムを批判する文化上の運動で、近代の行詰りを克服しようとする動き 自立的な理性的主
