昨年12月7日の日没直後。高知県四万十市名鹿(なしし)の高台に上ると、目の前に幻想的な光景が広がっていた。 四万十川の河口に散らばる100隻以上の小型船。それぞれが集魚灯の光をきらめかせ、暗い水面を黄緑色に照らしている。この日はニホンウナギの稚魚、シラスウナギの漁の解禁日だ。 風は冷たいが緩く、かすかな波音が耳に届く。船が放つホタルのような光は、多くがその場にとどまり、一部はゆっくりと海に向かって流れる。新しい光が上流の暗闇や近くの漁港から現れ、隙間に入り込んでいく。 岸辺に降りると、陸上組も獲物を狙っていた。背丈を越えるアシの間や護岸、砂利の浜、岸壁…。至る所で集魚灯の発電機が低くうなる。 しかし、この日の漁は不調。声を掛けるたび、「だめだめ」「まだシラスの顔も見ちょらん」。素っ気ない返事が返ってきた。 そのうちの一人、目出し帽の男性が少し離れた岸辺を指さした。「記者さんよ、あそこは行か