数年前から予兆は表れていた。 ヘザー畑に蔓延るイネ科の植物。川や湖の酸性化。野鳥の卵の殻が柔らかくなる現象。 だが窒素危機は、生物の大量死でも汚染による健康被害でもなく、2019年の一つの判決を機に、突然起こった。 それ故に3万弱 から7万人分の雇用が失われると計算する機関もあった (NOS, 2019)(ABN AMRO, 2019)。 今回の記事では、窒素危機に陥ってしまった背景と、それに対応するために今年施行された新・窒素法を紹介する。 窒素を輸入しては自国に投棄する 貿易志向型のビジネスモデルを確立したオランダでは、特定の作物や家畜に特化した、生産性重視の農業が発展してきた。オランダ西部での最先端技術を駆使したガラス温室栽培、北部の酪農、前世紀にできたばかりの干拓地での根菜・穀物栽培。九州と同じくらいの面積にしながら、農畜産物の輸出額はアメリカに次ぐ世界二位を誇る農業大国だ。 これ