その乗客は、運転席のすぐ脇で罵声を浴びせ続けてきました。会社に押しかけて来て、大声でどなり続け、謝っても謝ってもずっと謝罪を求めてきました。「またあの人がバスに乗ってくるんじゃないか…」そう思うと、眠れなくなり、乗務できなくなりました。カスタマーハラスメント(カスハラ)は働く人たちの心に大きな傷を残してしまうほどの深刻な被害をおよぼしています。 (ネットワーク報道部記者 和田麻子) 「ブレーキがきついんだよ!」 首都圏のバス会社に勤務する40代の運転手、山本さん(仮名)は乗客から、突然、こうどなられました。これまでもクレームは経験したことがありましたが、運転席のすぐ脇まで来て、しかもどなられるというのは初めてでした。 その乗客は一見、どこにでもいるような中年の男性。ただ、そのあまりのけんまくに、「危害を加えられるかも」と身の危険を感じるほどのものでした。どう対処していいかわからず、とにかく