マクロ経済学者の多くは歳入を貨幣発行に頼る財政ファイナンスに対して強い警戒心を持っている。一方で、日本が20年近く安定した物価を維持しているためか、インフレに対する恐怖心が蒸発してしまっている人が多いようで、ネット界隈にはマクロ経済学者の言説を感覚的に理解できない人々が一定数いるようだ。クーデターで政府転覆されるケースすらあるのだが、時折インフレで滅んだ国は無いような言説も見かける。時が経つと失敗への反省は薄れるものらしい。しかし、国外に目を向ければ今も高いインフレーションと経済混乱に苦しむベネズエラがあり、財政ファイナンスの帰結がどのようなものかを知る事ができる。 1. ハイパーインフレーションに至るまで ベネズエラは世界でもっとも原油確認埋蔵量の多い国で、1950年には世界で4番目に裕福な国であった。欧州や日本に抜かれはするが、原油生産に頼ることで1980年代までは順調に成長を続けてい