◯「ツァラトゥストラ」ゲスト講師 西 研 人間は“創造的”に生きよ 十九世紀ドイツの哲学者ニーチェの主著『ツァラトゥストラ』は、正確に訳せば『ツァラトゥストラはこう言った』という四部構成の書物です。書かれたのは一八八三年から八五年、ニーチェが四十歳前後のころです。この本は彼自身にとって、とても重要な意味をもつ本でした。「かつて人類に贈られた贈り物のなかでの、最大の贈り物」(『この人を見よ』序言§ 4)と後に述べたほど、大きな自負をもっていたのです。この後に書かれた彼の書物は、すべてが『ツァラトゥストラ』に込められた思想をもう一度自分で詳しく解説するといった趣があります。 しかしながら当時、この本はまったく売れませんでした。とくに第四部は、最初は自費出版で四十部を印刷し、友人に配ったのみだったといわれています。そんな本がその後、現在にいたるまで非常に大きな影響を与え続けています。それはいった