「優勝だけを目指して頑張りたい」。昨年末に行われた記者会見で、WBCに臨む意気込みを聞かれた大谷翔平はそう答えた。メディアはこぞって「優勝宣言」と書き立てたが、その場で彼はこうも語っている。「野球を始めてから今日まで、1位以外を目指したことはない」と。 この大会でも勝つことだけを考える。そしてすべての試合で勝つとしたら、結果は優勝しかない。まるで「夜が明けると朝になります」というぐらい気負いなく、彼としては当たり前のことを述べているだけのように見えた。 右足と左足を交互に動かすと歩けることに初めて気付いた子どものように、自分が前に進むことが面白くて仕方がない。ベースボールジャーナリスト・石田雄太さんの取材を通して見えてくるのは、そんな無邪気とも思える大谷の姿だ。欲しいのは名誉でも賞賛でもなく、今よりも前に進むこと。だからこそ人々は彼を愛し、その姿に力をもらうのだろう。・・・