2012-12-13 腐女子デカ vs コミケ脅迫犯 暖房の効いた部屋で冬コミの戦利品である薄い本……つまりは同人誌を読みながら、Nは遠く響く除夜の鐘を聞いていた。 毎年、この時間が楽しみである。大晦日の夜は年越しそばを食べ終えると、紅白歌合戦などには目もくれず、初詣の用意もせず部屋に籠り、冬コミ三日目で手に入れた同人誌を読み耽り、得も言われぬ喜びの中で新しい年を迎えるのだ。そんな習慣をもう十年は続けているだろうか。 人付き合いは得意な方ではない。Nは今年で三十になるが、仕事あがりや休日は家で漫画を嗜むか、ネットに没頭するかばかりの日常だった。充実感は薄いが、困ることもない生活である。 そんな「彼」の人生にこの数カ月、大きな変化があった。ふと、ページを捲る指を止めてスマートフォンを操作する。 『結局、頒布しているサークルはひとつもなし……××さんの新刊楽しみにしてたのに!』 『会場は微妙な