2003年,ヒトゲノムプロジェクトによるヒトの全遺伝情報を含むゲノム配列が完成した。ヒトゲノムプロジェクトは先行投資であり,データを提出しただけで,終わりではない。これを解釈し,医学や生物学に有効利用することが目的である。データは公共データベースに公開され,誰もが利用できるが,その全容の理解にはまだ至らない現状があり,今後の研究の進展が待たれる。しかしその一方で,関心は共有のヒトゲノムから個のヒトゲノムへと移り,個人の遺伝子型に応じたオーダーメード医療の実現に向けた研究が盛んに行われている。ヒトゲノムプロジェクトでは,13年間30億ドル以上を投資したヒトゲノムを,一晩1000ドルで解析する技術も提案され,その勢いは加速しつつある。 バイオサイエンスにおけるデータベースの重要性は,公共のデータを共有し,それが研究や実用へと広がりを見せることである。その広がりは医療,食糧,環境といった身近な問