米国の雇用増大や経済格差是正を求めるデモ、欧州の外国人労働者を排除する動きなど、先進国社会の内部に注目すべき現象が生じつつある。経済成長の鈍化により、その恩恵が一般庶民に及ばなくなってきているのである。 19世紀以来、世界の富を独占してきた欧米の先進国から中国、インドなどの新興国へと富がシフトし、旧来の経済的枠組みが音を立てて崩れる状況が現出しているのだ。ユーロ圏の財政危機に伴う信用不安もその反映とも言えるし、米国の経済戦略である環太平洋連携協定(TPP)も旧来の経済的覇権を死守するための新しい枠組み作りと理解するべきであろう。 かつて、19世紀の大思想家マルクスは「先進国は後進国の未来を映す鏡である」と予言した。後進国は必ずや先進国の姿に近づくという意味合いである。しかし、20世紀の世界は、この予言とは逆に北の先進国はますます富み、南の後進国はますます貧しくなるという、いわゆる「南北