私は1年半前、病で母を失った。 当時の私は、「ホスピス病棟に入院する」ことはどういうことを意味しているか知らなかった。私は学生で春休みだった(とは言っても就職活動はまっただ中だったのだが)こともあり、母の病室には毎日のように通っていた。その日は大雨。いつものように車を運転し病室に行き、母に話しかけながらコンピュータをたたき、就職活動の書類を書いていた。 その日、母の様態が急変した。突然咳き込みだし、私は看護師に声を掛けた。この症状は危篤です、と告げられた。私が車で駅まで迎えに行き、徐々に親戚一同が集められる。 母はいつだって「苦しい」「しんどい」「つらい」、弱音を吐かなかった。その母に 「大丈夫? 苦しい?」 と声を掛けるとうなずき、初めて苦しいという意思表示をした。それを見た看護師は、 「少し眠らせましょう」 と言い、麻酔のような(当時よくわからなかった)点滴で一時的に眠らせる措置を執っ