エンゲル係数が上昇しているという動きが注目されている(図録2355参照)。 日本において経済成長とともに戦後を通じ長らく低下し続けていたエンゲル係数が、2005年頃を境に、反転上昇していることが明らかになった時、日本のメディアや有識者は、政府が改善に向け真剣に取り組まないため顕在化した格差拡大のせいだと何の疑問もなく報じたり論じたりした。 私は、日本の動きだけが取り上げられ、エンゲル係数の動きについて国際比較したデータが何故、参照されないのかが不思議でならなかった。世界共通の現象なら、わが国の局所的な社会現象の観点からではなく、もっと広い視野からそれが示す課題を明らかにできるはずだからである。そこでここでは主要国のエンゲル係数の動きを比較した。 わが国以外では家計調査は本格的・継続的に行われてはおらず、行われているとしても基準が同一だとは限らないので、諸外国の家計調査を使うわけには行かない