やべ、一行たりとも感想が書けない。このblogを選書の参考にしている奇特な方もいらっしゃるようなので、書けない。どう書いてもバレになる。こんな小説は珍しい。 常態から異常事態へ。このお話を「狂気」の一言で片付けられたらどんなに嬉しいことか。しかし、どこも狂ってないのがおそろしい。だいたいヒトを「正気」と「狂気」の2色で塗り分けようとすること自体がおかしい。正気の中にも狂気を宿し、狂っていても一貫性を見出そうとするのが、ヒトだ。 これは、その変移を味わう小説。賛否両論の「驚愕のラスト」は○○○○したが、「他にどんな終わり方を望む?」と自問して、飲み込んだ。 兄が死んだのは、ぼくが十三のときだった。線路を渡ろうとして転び、第三軌条に触れて感電死したのだ。いや、それは嘘だ。ほんとは……。ぼくは今、ウィーンで作家活動をしている。映画狂のすてきな夫婦とも知り合い、毎日が楽しくてしかたない。それなのに
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