切って、火を通して、味つけして、おしまい。あとは素材と種類のバリエーションで、料理とはそんなものだと思ってた。 しかし、本気で「おいしい」を求めると、土や水からの話になるし、分子や組成レベルまで分け入った、味わいの認知科学・生理学の研究になる。そこはもはや、経験や伝統を超えた科学の領域で、台所はラボラトリーになり、調理技術はは化学や物理に還元される。 本書では、「分子調理」をメインに、科学の視点から「おいしさ」の本質に迫る。「分子調理」とは、物理・化学・生物、そして工学の知識を調理プロセスに取り込み、新しい料理を創造する試みだ。「新しいご馳走の発見は、人類の幸福にとって新しい天体の発見以上のものだ」と言った美食家がいたが、これは新たな星雲の発見以上になるかもしれぬ。 たとえば、食材の「相」を変えるという発想が紹介される。氷・水・水蒸気に代表される、固体・液体・気体の相のことだ。通常なら、加
![60分で常識が変わる『料理と科学のおいしい出会い』](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/15a0200e4e07fe1cc7d1d823a40a067a2f708e51/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fdain.cocolog-nifty.com%2Fmyblog%2Fimages%2Fsugohon.jpg)