年に一度、友人にメイクを習いに行く。友人は何段にも分かれたメイクボックスを持っていて、いくつかの色をわたしの顔にあてる。彼女は眉の描き方を修正し、アイカラーとアイライナーを変えて塗り方を教示し、新しいアイテムとしてハイライトをわずかに使うことを提案して、実際に塗ってくれた。 わたしは彼女の指示をメモする。彼女がつくってくれた「今年のわたしの顔」を撮影する。彼女はアイカラーをふたつくれる。いくらでも買っちゃうから、もらって、と言う。メイクボックスの薄べったい抽斗に目をやると、ずらりとアイカラーが並んでいる。必要があってこんなに買うのではないの、と彼女は言う。だからあげても問題はないの。コスメを買いすぎるのはね、実存の問題ですよ。 実存の問題、とわたしは言う。実存の問題、と彼女も言う。そうしてぱたりとメイクボックスを閉じる。 わたしは母の鏡台を思い出す。父方の祖母のお下がりで、ものすごく古かっ