年配の方なら、昭和52年1月、ロッキード事件・田中角栄被告らの初公判の衝撃をご記憶だろう。事件当時、田中首相邸を商社幹部が訪ね、5億円の賄賂(わいろ)を申し入れた。首相は上機嫌で了承したことなどが、検察側の冒頭陳述で赤裸々に明かされたのだ。 ▼田中元首相は同じ初公判で、涙声になりながら否認した。だが国民の多くが関心を寄せたのは、ことの真偽だけではなかった。密室の中で重要施策が決まるような「政治」の現実に対してである。裁判がなければ、垣間見ることさえできない世界だったのである。 ▼その田中元首相の愛(まな)弟子とされる小沢一郎民主党幹事長の秘書が起訴された罪名は政治資金規正法違反である。被告はむろん小沢氏自身ではないし、事件の規模は小さい。だが初公判での冒頭陳述を読むとそこにはやはり「小沢政治」らしさが感じられてならない。 ▼例えば「天の声」で岩手県立病院の工事を受注したゼネコンが献金の減額