『阿Q正伝』は、魯迅の代表作。私は竹内好訳の岩波文庫(1955年)で読んだが、あまり内容を覚えておらず、話としては面白くなかったんだろうと思う。魯迅はこの作を通して、中国人のどうしようもない愚かさを批判的に描きたかったらしいので、思想的な意味合いの方が強い作品なのだろう。 阿Qには「精神勝利法」という独特の思考法があり、客観的には明らかな敗北であるのを、内部の思考によって巧みに勝利にすり替えることができる。ちょっとわかりにくいが、本来なら敗北すれば自尊心が傷つき、それを取り戻すには多大な努力が必要となるが、精神勝利法を使うことで敗北が勝利にすり替わり、自尊心が傷つかずに保たれる、ということだろ…