2012年6月6日,金星が太陽の前を通過する「金星の太陽面通過」の全過程が,日本全国でみられる。今世紀では今回が最後の機会だ。ぜひ観察してみてほしい。【執筆:渡部潤一 国立天文台副台長】 2012年は天文現象「金」の年。金環日食につづいておきるのが,6月6日の「金星の太陽面通過」である。日食は太陽,月,地球と並んだときにおきるが,こちらは太陽,金星,地球と並ぶものだ。 金星や水星は「内惑星」,つまり地球よりも内側を公転している惑星だ。したがって,タイミングによっては,地球から見て太陽と重なり,その表面にシルエットとなって動いていくのが観察できる。これが「太陽面通過」,あるいは「日面経過」とよぶ現象である。 水星の太陽面通過は,天体望遠鏡を用いないと観察できない。だが金星は,太陽の30分の1ほどの大きさがある。金環日食の観察で用いた日食グラスを使うと,太陽面にぽつんと,真っ黒なほくろの