私が十代の終わりから二十代に影響を受けた北村透谷の詩と評論を見つめ直し評論を読み返す中で、私の心に特に響き今も共感を覚える透谷の言葉を、主要な主題「1.詩、詩人」、「2.恋愛」、「3.平和、戦争」にわけて抜粋します。評論でありながら透谷の言葉には詩精神がみなぎっています。 出典は『北村透谷選集』(岩波文庫、1970年)です(作成に当たっては青空文庫も利用させて頂きました)。 1.詩、詩人 詩人は、本質的なもの、真、善、美を情熱、熱意をもって感応し再造し発露する器だとの言葉に、私は共感し、励まされています。 『富嶽の詩神を思ふ』(初出:「文学界」、1893(明治26)年1月、24歳) 「是より風流の道大に開け、人麿赤人より降つて、西行芭蕉の徒、この詩神と逍遙するが為に、富嶽の周辺を往返して、形 (けい)なく像(ざう)なき記念碑を空中に構設しはじめたり。詩神去らず、この国なほ愛すべし。詩神去ら