歌謡と詩歌の交わりの視点から古代歌謡を見つめています。今回から作品そのものから、聴きとります。最初は古代の歌垣で謡われた民謡です。 ☆作品(原文と訳文) 歌垣の歌 霰(あられ)降る 杵島(きしま)が岳(たけ)を 嶮(さが)しみと、 草取りかねて 妹が手を取る 〈訳: (霰降る)杵島の岳が嶮しいので、(山に登るのに)草に取りつくことができずに、妹の手を取るよ。〉 高浜(たかはま)に 来寄する浪の 沖つ浪。 寄すとも寄らじ、子らにし寄らば。 〈訳: 高浜(地名)に寄せて来る沖の浪。(その沖の浪が)寄せて来ても、(私は)寄らないで、子らに寄ろう。 *子らは、娘たちをいう。〉 古代歌謡の母体には民謡があります。民謡はわかりやすく誰もが共感しやすい言葉、日常生活の俗な言葉で謡われますが、論理的な意味がつながらない、なんとなくわかるがつじつまは合わない歌詞も多くあります。 そのことについては、引用文献