『日本の詩歌26 近代詩集』(中央公論社、1979年)を読んでいます。これまで出会う機会のなかった良い詩を見つけると私は嬉しくなります。 今回は、生田春月(いくたしゅんげつ、1892年~1930年)の詩を見つめ感じ考えます。 二十歳前後に私は彼の詩集を手元にもって読んでいました。彼は昭和五年に自殺しています。その頃私は生と死の境界線上にいたので、彼の言葉は死にひっぱる力として心に刺さりました。今回この本に掲載された詩を読むと。今もまた私の心に響くものがあります。彼の詩「誤植」を紹介します。 誤植 生田春月 我が生涯はあはれなる夢、 我れは世界の頁(ページ)の上の一つの誤植なりき。 我れはいかに空(むな)しく世界の著者に その正誤(しやうご)をば求めけん。 されど誰か否(いな)と云ひ得ん、 この世界自らもまた あやまれる、無益なる書物なるを。 この作品を詩と感じるかどうかは、読者次第です。告