人毛についたアタマジラミの卵を顕微鏡で見たところ。(PHOTOGRAPH BY DARLYNE A. MURAWSKI) 数年前からある男性が、家族に恐ろしげなことを言うようになった。自分の体内に虫がいるというのだ。 その虫には硬い殻があり、潰すとバリバリと音がするという。虫は自分の体内、とくに鼻や陰部の中を動き回っていると男性は訴える。当初、男性の家族は、そんなことはありえないとやんわりと本人に伝えたが、彼はいっそう頑なに同じことを言い募るばかりだった。(参考記事:「目から寄生虫が次々と、14匹を摘出、初の感染例」) 実際の「標本」を集めようと、男性は鼻にピンセットを突っ込んで組織や軟骨を引っ張り出し、しまいには鼻の隔壁に穴を開けてしまった。検査を何度繰り返しても虫を見つけられない医者たちはお手上げだった。 これは「寄生虫妄想」あるいは「モルゲロンズ病」という病気の典型的な症状だ。寄生虫