「このスタッフがほしい。このスタッフがいれば、俺もやれるかな」長編アニメの製作を引退したはずの宮崎駿は、本作『レッドタートル ある島の物語』を観て、プロデューサーの鈴木敏夫に、そのようにつぶやいたという。 荒波にもまれ、ある浜辺に打ち上げられた、ひとりの男。彼は周囲を見回すため山に登ると、そこが小さな無人島であることを知る。『レッドタートル ある島の物語』は、そのように始まる。不幸中の幸いなのか、そこには、生き伸びるための最低限の自然が用意されていた。木の実を採ることができる木々、飲み水が得られる泉、魚を捕ることができる浅瀬、あらゆる建材になる竹の林、そして、蟹がたわむれる浜辺と広大な星空……。しかし、そこには人間がいない。彼は、人恋しさと自分の境遇に落胆し、誰もいない浜辺でひとり慟哭するのだった。 都市生活には希薄な、生き物が命を奪い合い、いつでも死が隣り合わせにある自然。本作はそのよう