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ブックマーク / realsound.jp (97)

  • 『DAU. ナターシャ』新場面写真公開 ソ連秘密研究施設を再現したセットの数々が

    2021年2月27日公開の映画『DAU. ナターシャ』より、新たな場面写真が公開された。 ロシアの奇才イリヤ・フルジャノフスキーは処女作『4』が各国の映画祭で絶賛を浴びると、“史上最も狂った映画撮影”と呼ばれたプロジェクトに着手。それは、いまや忘れられつつある“ソヴィエト連邦”の記憶を呼び起こすために、“ソ連全体主義”の社会を完全に再現するという前代未聞の試みだった。オーディション人数約40万人、衣装4万着、欧州史上最大の1万2千平米のセット、主要キャスト400人、エキストラ1万人、撮影期間40カ月、35mmフィルム撮影のフッテージ700時間……莫大な費用と15年もの歳月をかけて完成させた。 作は、その膨大なフッテージから創出された映画化第1弾であり、ランダウが勤めていた物理工学研究所に併設されたカフェのウェイトレス、ナターシャが主人公となる。作でスカウトされた新人ナターリヤ ・ベレ

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  • 大塚英志が語る、日本の大衆文化の通史を描く意義 「はみ出し者こそが権力に吸収されやすい」

    太平記から漫画、模型、アニメ、ボーカロイドまで、日の大衆文化の通史を一冊ので描き切った日文研大衆文化研究プロジェクトによる書籍『日大衆文化史』(KADOKAWA)。 大塚英志氏 このでは、漫画の鳥獣戯画起源論など、現代の日文化が中世や近世にルーツを持つとする説は、戦時下に政治的に必要とされて「創られた伝統」だと退けた上で、それとは別に一貫して存在してきた運動を描いていく。 「お約束」や共通前提(歌舞伎でいう「世界」)を踏まえながら新要素(同じく歌舞伎でいう「趣向」)を入れて作品が生み出されていくという、二次創作的とも言える仕組みこそが「文化」であり、それは有象無象の大衆=民俗学者の柳田國男がいう「群れとしての作者」が担ってきた、という見立てのもとで見えてきた「日」「大衆」文化史の姿とは――主筆を務めた国際日文化研究センター教授・大塚英志氏に訊いた。 『日大衆文化史』は通史を

    大塚英志が語る、日本の大衆文化の通史を描く意義 「はみ出し者こそが権力に吸収されやすい」
  • 『千と千尋の神隠し』はいかにして興行収入300億円を突破した? 公開当時を振り返る

    ここ数週間、ネット上を含めたメディア各種でアニメ映画『千と千尋の神隠し』(2001年)のタイトルを目にすることが多い。言うまでもなく、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」(2020年)の大ヒットぶりに絡めてである。映画を観に訪れた観客が、興行側に払うお金(前売り券、当日券を問わない映画鑑賞券)の合計金額を興行収入と呼ぶが、日国内における歴代興行収入作品の第1位は、目下『千と千尋の神隠し』の308億円だ。この映画はなぜそこまでの興行成績をあげられたのだろうか? この機会に公開当時の情勢を絡めながら振り返ってみたい。 改めて情報を整理しよう。『千と千尋の神隠し』は、『天空の城ラピュタ』(1986年)より始まったスタジオジブリ制作の長編アニメ第11作目で、原作・脚・監督の3役を宮崎駿が兼任。2001年7月に日で公開されて大ヒットし、同年さまざまな国内の映画賞を受賞。翌2002年には日アカデミ

    『千と千尋の神隠し』はいかにして興行収入300億円を突破した? 公開当時を振り返る
  • 殺人鬼カップルのメチャクチャさについていけない! 『ハネムーン・キラーズ』と『地獄愛』

    あけましておめでとうございます。年始から殺人の話で恐縮ですが、今回はアメリカの犯罪史に残る殺人鬼カップルを扱った映画をご紹介しようと思います。 殺人鬼といえば単独犯のイメージが強いですが、なかなかどうして、夫婦やカップルで殺っちゃう例も少なくありません。現代の日でも年に1回は男女コンビが事件を起こしている印象があります。今回ご紹介する殺人鬼もカップルなのですが、これがちょっと特殊な関係にあります。 2人の殺人鬼……伊達男のレイと、中年女性マーサは雑誌の文通コーナーで知り合いました。手紙を送り合うこと数回、遂に2人は結ばれます。しかし、レイは寂しい女性を狙う結婚詐欺師だったのです。もちろんマーサもカモの1人。これほど最悪の出会いもないと思いますが、ところが人間とは不思議なもので、2人は当に愛し合ってしまいます。レイは結婚詐欺を続け、マーサは彼の仕事を手伝います。しかし、マーサはレイが他の

    殺人鬼カップルのメチャクチャさについていけない! 『ハネムーン・キラーズ』と『地獄愛』
  • “おジャ魔女世代”の問題を描いた本来の続編に? 『魔女見習いをさがして』に仕掛けられた“魔法”

    日曜朝の枠で、1999年から2003年までテレビ朝日系で放送していた、魔法少女アニメ『おジャ魔女どれみ』シリーズ。当時の3歳から8歳の女児を対象に、多くの視聴者の心に残っている作品だ。作『魔女見習いをさがして』は、そんなTVシリーズを当時鑑賞していた人々に向けたアニメーション映画である。 面白いのは、主人公がどれみたちではなく、『おジャ魔女どれみ』の放送を子どもの頃に観ていた20代女性たち3人であるということ。それぞれ、27歳のキャリアウーマン、22歳の大学4年生、20歳のフリーターと、年齢も境遇も生活水準も生活圏も異なるキャラクターが、アニメーションで表現されている。ちなみに、この年齢差は4年続いた最初のシリーズを8歳で観ていた場合と、最後のシリーズを3歳で観ていた場合の視聴者から割り出した“おジャ魔女世代”の幅だという。 主人公たちは、仕事、家庭、恋愛など、それぞれに人生の課題に直面

    “おジャ魔女世代”の問題を描いた本来の続編に? 『魔女見習いをさがして』に仕掛けられた“魔法”
  • 空前の『鬼滅の刃』現象 映画興行は「なりふりかまわない」新基準へ

    今週ほどこのコラムが書きにくい週はない。全国各シネコンの公開初日の異常なまでのスクリーン割り多さが明らかになった先週半ば以降、ソーシャルメディア→ウェブメディア→テレビという順番で、あらゆるところで話題の中心となっている『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の爆発的ヒット。今さら数字を上げるのも躊躇われるが一応。10月16日に公開された同作の初日金曜日の動員は91万507人、興収は12億6872万4700円。土日2日間の動員は251万人、興収は33億5400万円。オープニング3日間の動員は342万493人、興収46億2311万7450円。いずれも2位以下を大きく引き離して、歴代1位となる空前の初動成績を打ち立てた。 この数字は、先週末2位に初登場した『夜明けを信じて。』の約25倍。今年公開された『コンフィデンスマンJP プリンセス編』、『映画ドラえもん のび太の新恐竜』、『事故物件 恐い間取り』

    空前の『鬼滅の刃』現象 映画興行は「なりふりかまわない」新基準へ
    akakiTysqe
    akakiTysqe 2020/10/23
    生殺与奪の権を、シネコンに握らせるな!
  • アニメ版『はめふら』、原作ファンも虜にする魅力 メディアミックス成功のポイントは?

    今期アニメの“伏兵”として快進撃を続けているのが、『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』、通称『はめふら』だ。放映前の注目度はさほど高くなかった作だが、アニメの第1話が評判を呼び、以後人気が爆発。これにともない、山口悟による原作小説も注目を集め、4月発売の最新刊9巻のみならず既刊の売上も好調と、大旋風を巻き起こしている。 『はめふら』はオンライン小説投稿サイト「小説家になろう」に連載後、2015年に一迅社文庫アイリスから商業出版され、3巻以降は書き下ろしとして継続中のシリーズである。今や女性向けネット小説の人気ジャンルとして定着した「悪役令嬢もの」を決定づけた作品の一つであり、これまでに9巻が刊行された。さらに、小説の挿絵担当のひだかなみによる漫画化も進められ、コミックスは第4巻まで発売。クオリティの高いコミカライズは好評を博し、『はめふら』の人気を後押しする。こ

    アニメ版『はめふら』、原作ファンも虜にする魅力 メディアミックス成功のポイントは?
  • 伊藤沙莉の浅草氏は最高だ! 『映像研には手を出すな!』没入に誘うハスキーボイス

    深夜に放送されているアニメ『映像研には手を出すな!』(NHK総合)に毎週目を潤ませてばかりである。アニメ製作に没頭する女子高生3人組、浅草みどり(伊藤沙莉)・金森さやか(田村睦心)・水崎ツバメ(松岡美里)と、その情熱に感化されるように増えていく仲間たち。 彼らの想像の中の「最強の世界」が、画面の中を自由自在に飛び回り、溢れ出し、試行錯誤の末に形になっていこうとする過程は、同じように映像製作に心を燃やしたかつての若者たち、『月刊!スピリッツ』(小学館)で連載中の大童澄瞳による原作ファンだけでなく、なんとなく見始めた視聴者の目も釘づけにし、心を震わせずにはいられない。 『映像研には手を出すな!』の初回冒頭は、まだ彼女特有のファッションと口調という個性を身につけていない幼いヒロイン・浅草みどりが、宮崎駿が手がけた『未来少年コナン』を思わせる『残され島のコナン』に魅了されるまでが描かれている。まだ

    伊藤沙莉の浅草氏は最高だ! 『映像研には手を出すな!』没入に誘うハスキーボイス
  • 人は抑圧にどう立ち向かうのか? 『ロニートとエスティ』ラストシーンが象徴する現代的なテーマ

    セバスティアン・レリオの前作『ナチュラルウーマン』では、文字通りの「逆風」に立ち向かう女性が鮮烈に映し出されていたが、作『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』もまた、そうした「逆風」に立ち向かう女性(たち)が中心に据えられている。彼女たちは何に立ち向かっているのか? それは抑圧であり、慣習であり、権威であり、その象徴としての「父」である。 同性愛と宗教の相克は多くの文学や映画が提示してきたものだが、作はむしろ、宗教に限らない父権なるものとの対峙を見据えているように思える。原作はイギリス人女性作家のナオミ・オルダーマンの自伝的小説であり、彼女がのちに発表した小説『パワー』において、女性が男性を「支配」することになったディストピアを描きつつジェンダーによる支配/被支配の構造を浮かび上がらせていた点とも、通じる主題だと言えるだろう。 舞台となっているのはイギリスの「超正統派」と呼ばれる厳格な

    人は抑圧にどう立ち向かうのか? 『ロニートとエスティ』ラストシーンが象徴する現代的なテーマ
  • ポストジブリという問題設定の変容、女性作家の躍進 2010年代のアニメ映画を振り返る評論家座談会【後編】

    年が明け2020年に突入。同時に2010年代という時代も終わりを迎えたリアルサウンド映画部では、この10年間のアニメーション映画を振り返るために、レギュラー執筆陣より、アニメ評論家の藤津亮太氏、映画ライターの杉穂高氏、批評家・跡見学園女子大学文学部専任講師の渡邉大輔氏を迎えて、座談会を開催。10年代を代表するアニメーション作家をトピックに語り合ってもらった。 細田守や新海誠をはじめとするアニメーション監督に注目した前編に続き、後編では、「ポスト宮崎駿」をめぐる議論の変容や女性作家の躍進、SNSとアニメーションの関係性について語り合った。 ポストジブリという問題設定の時代 宮崎駿監督『風立ちぬ』 渡邉大輔(以下、渡邉):「ポストジブリ」「ポスト宮崎」という問題設定がいまでもしばしばなされますが、僕自身はこんな見立てを持っているんです。おそらくそれに関しては、2010年代の前半と後半で、アニ

    ポストジブリという問題設定の変容、女性作家の躍進 2010年代のアニメ映画を振り返る評論家座談会【後編】
    akakiTysqe
    akakiTysqe 2020/01/14
    https://twitter.com/ogawab/status/1216919502689955840?s=21 ビジネスとしてジブリなきあとを考えることと、世間の好みの動向を語ることと、アニメの流れを見つめることは本来別物のはずだhttps://twitter.com/ogawab/status/1216919925995950080?s=21
  • アニメ『クズの本懐』第3話で描かれたリアルな同性愛 ファンタジー的な百合描写とはどう違う?

    フジテレビ・ノイタミナ枠で放送中のアニメ、『クズの懐』。原作者の横槍メンゴは、もともと成人向け漫画を手がけていたこともあって、原作漫画でもかなり過激な描写が多い。そのため、アニメでもある程度は攻めてくるだろうと覚悟して放送に臨んだのだが、第1話冒頭から濃厚なキスシーンが炸裂したものだから、思わず面らってしまった。さらに、先日放送された第3話では、主人公・花火と、花火の親友・早苗(えっちゃん)の女性同士の絡みも描かれ、一層ハラハラする展開となった。 第3話の予告が公開された時点で、ネット上では「レズの懐」と揶揄されたり、いわゆる「百合」展開をもてはやすような声が散見された。しかし、作で描かれている花火と早苗の関係は、これまでの地上波放送のアニメで頻繁に見受けられた百合描写とは、大きく異なる手法で描かれているように感じた。 そもそも、アニメや漫画のジャンルとしてしばしば使用される「百合

    アニメ『クズの本懐』第3話で描かれたリアルな同性愛 ファンタジー的な百合描写とはどう違う?
  • 細田守と新海誠は、“国民的作家”として対照的な方向へ 2010年代のアニメ映画を振り返る評論家座談会【前編】

    細田守と新海誠は、“国民的作家”として対照的な方向へ 2010年代のアニメ映画を振り返る評論家座談会【前編】 年が明け2020年に突入。同時に2010年代という時代も終わりを迎えた。リアルサウンド映画部では、この10年間のアニメーション映画を振り返るために、レギュラー執筆陣より、アニメ評論家の藤津亮太氏、映画ライターの杉穂高氏、批評家・跡見学園女子大学文学部専任講師の渡邉大輔氏を迎えて、座談会を開催。 前編では、細田守や新海誠など、今や国民的作家となったアニメーション監督に注目。なお、後日公開予定の後編では、「ポスト宮崎駿」をめぐる議論の変容や女性作家の躍進、SNSとアニメーションの関係性について語り合っている。(編集部) 最初の地殻変動は2012年 ――2014年に『アナと雪の女王』と2016年に『君の名は。』と、2010年代に入ってから、興行収入が200億を超える作品が出てくるように

    細田守と新海誠は、“国民的作家”として対照的な方向へ 2010年代のアニメ映画を振り返る評論家座談会【前編】
  • 年末企画:藤津亮太の「2019年 年間ベストアニメTOP10」 アニメが「歴史」の対象になり始めた

    リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2019年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに加え、今年輝いた俳優たちも紹介。アニメの場合は2019年に日で劇場公開された映画、放送・配信されたアニメの作品から、執筆者が独自の観点で10をセレクト。第13回の選者は、アニメ評論家の藤津亮太。(編集部) もうひとりの自分 ・『えいがのおそ松さん』 ・『HELLO WORLD』 ・『空の青さを知る人よ』 原作の再構築 ・『どろろ』 ・『海獣の子供』 ・『ぼくらの7日間戦争』 オリジナルの挑戦 ・『きみと、波にのれたら』 ・『さらざんまい』 ・『星合の空』 海外 ・『失くした体』 番外 ・NHK連続テレビ小説『なつぞら』 ・BS1スペシャル『ガンダム誕生秘話 完全保存版』 ほかの年間回顧等で取り上げられなかった作品を3つのテーマ別にできる

    年末企画:藤津亮太の「2019年 年間ベストアニメTOP10」 アニメが「歴史」の対象になり始めた
  • 年末企画:杉本穂高の「2019年 年間ベストアニメTOP10」 劇場アニメが類を見ないほど豊作の年に

    リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2019年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに加え、今年輝いた俳優たちも紹介。アニメの場合は2019年に日で劇場公開された映画、放送・配信されたアニメの作品から、執筆者が独自の観点で10をセレクト。第10回の選者は、神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人で、現映画ライターの杉穂高。(編集部) 今年もたくさんの作品を観た。そしてたくさんの作品を観逃した。このベスト10企画の際には毎年書いているが、どの分野も作品数が多すぎて、一人の人間には当の意味で年間ベスト10を選ぶことはできなくなっている。アニメーションという分野一つとっても、識者それぞれ観測範囲が異なる。これは筆者の狭い観測範囲でのベスト10でしかないことをご承知おきください。 1. 『海

    年末企画:杉本穂高の「2019年 年間ベストアニメTOP10」 劇場アニメが類を見ないほど豊作の年に
  • キャラクターの情報量が少ないのはなぜ? 新海誠『天気の子』に見る、「口承文芸」からの影響

    新海誠監督の最新アニメーション映画天気の子』はディズニー映画『アラジン』を抜き、今年度最もヒットした作品として観客動員数が1022万人を超え、国内興行収入が136億円を突破した(2019年10月15日地点)。また、第92回米国アカデミー賞国際長編映画賞部門(旧外国語映画賞)の出品作品に選ばれたことでも話題になっている。 東京で見つけた仕事である雑誌の執筆をするために「100%晴れ女」を調査する家出少年森嶋帆高(醍醐虎汰郎)と、「100%晴れ女」である天野陽菜(森七菜)が世界のかたちを変えてしまう“秘密”について知る物語である。 『天気の子』には「都市伝説」あるいは「伝説」が多く登場し、また一方で、キャラクターの情報量に関しては極端に少ない。それらのことから、私は「口承文芸」の要素が多いのではないかと考えた。稿では、『天気の子』に見る、口承文芸との繋がりを考察していきたい(以下、『天気の

    キャラクターの情報量が少ないのはなぜ? 新海誠『天気の子』に見る、「口承文芸」からの影響
  • 高畑勲×宮崎駿『太陽の王子 ホルスの大冒険』の“失敗”が、日本のアニメーションに遺したもの

    アニメーションの黎明期にスポットを当て、当時のアニメーターがモデルと思われる人々が多数登場するNHK連続テレビ小説『なつぞら』。劇中では、主人公・なつ(広瀬すず)と坂場(中川大志)ら東洋動画による長編漫画映画『神を掴んだ少年クリフ』が興行的失敗に終わる模様が描かれた。そして、現実にも同じように不入りに終わってしまったのが、高畑勲、宮崎駿による『太陽の王子 ホルスの大冒険』だ。稿ではその功績を紐解きたい。(編集部) 異彩を放った唯一無二の作品 東映の元社長だった大川博が「東洋のディズニー」を目指すべく設立したアニメ制作会社、東映動画(現・東映アニメーション)。『白蛇伝』(1958年)、『安寿と厨子王丸』(1961年)、『わんぱく王子の大蛇退治』(1963年)など、次々に高い品質の名作が発表され、その作品群は、後の日のアニメーションが隆盛する土台となっていった。そんな東映動画にあって、

    高畑勲×宮崎駿『太陽の王子 ホルスの大冒険』の“失敗”が、日本のアニメーションに遺したもの
  • 映画プロデューサー・奥山和由が語る深作欣二、北野武、そして日本映画の現在

    数々の映画作品の制作に携わってきた、日を代表するレジェンダリー・プロデューサーのひとりである奥山和由。リアルサウンド映画部では、沖縄国際映画祭取材の目玉として、エグゼクティブ・ディレクターを務め、自身の監督作『クロス』が上映される奥山氏に沖縄でインタビューを行った。映画祭について、また現在の日映画界について思うこと、さらに自身の監督作や北野武作品制作時の思い出などを通し、映画制作の神髄についてたっぷりと語ってもらった。(小野寺系) 実写では強烈な作品が生まれにくくなっている ーー近年、アニメを中心に日映画市場が拡大していますが、こうした状況を奥山さん自身はどう捉えていますか? 奥山:『君の名は。』一発で200億じゃないですか。じゃあ『君の名は。』を抜いたらいくらなのか? そういう分析をして、初めて映画界って見えてくる。ジブリが出たときからそうだけど、「今年は最高だ」っていう実績を

    映画プロデューサー・奥山和由が語る深作欣二、北野武、そして日本映画の現在
  • 『天気の子』から“人間性のゆくえ”を考える ポストヒューマン的世界観が意味するもの

    ポストヒューマンから読み解く『天気の子』の可能性 新海誠の監督第7作となる最新作『天気の子』が7月19日に、いよいよ公開されました。興行収入250億3000万円という日映画歴代2位の大記録を打ち立て、ハリウッドでのリメイクも決定し、さまざまな意味で日アニメの転換点になったとも評価された前作『君の名は。』(2016)から3年ぶりの待望の新作です。公開後の観客動員も好調なばかりか、批評的にも、すでに『君の名は。』以上の賛否両論を巻き起こしているようです。 『天気の子』は、伊豆諸島の離島から家出してきた高校生の少年・森嶋帆高(声は醍醐虎汰朗)と、天気を局地的に操る不思議な能力を持った「100%の晴れ女」天野陽菜(声は森七菜)が、異常な降雨が続くオリンピック後の東京の街で出会うボーイ・ミーツ・ガールの物語です。周りに身寄りもなく、貧しい彼らが陽菜の特殊能力を活かして晴れ間を呼び寄せるビジネスを

    『天気の子』から“人間性のゆくえ”を考える ポストヒューマン的世界観が意味するもの
  • “世界を肯定する力”をくれる京都アニメーション その卓越した技術が伝えてきたもの

    筆者は、2004年末から2010年末までアメリカのロサンゼルスに留学していた。京都アニメーションの作品に出会ったのは、2009年だった。 筆者は、いわゆる「エヴァ世代」で、90年代の第3次アニメブームをリアルに体験した世代だ。高校時代は昼間からレイトショーにかけてミニシアターで映画を観て、夜中に深夜アニメを観る生活をしていた。だが、映画学校に入学、その後、アメリカ留学時には、アニメから離れてしまった。 そんな筆者に、再び日のアニメの素晴らしさを教えてくれたのは、京都アニメーションが製作した『けいおん!』だった。夏季休暇等の一時帰国中に出会ったのだと記憶しているが、そのハイレベルな映画的センスに脱帽した。キャラクターの芝居の見事さ、小津安二郎を思わせるローポジションと切り返し、背景の写実的美しさなど驚くほどに緻密に作られていた。キャラクターデザインも目を見張った。ああいうリアルなO脚をアニ

    “世界を肯定する力”をくれる京都アニメーション その卓越した技術が伝えてきたもの
  • 『天気の子』が映すエンターテインメント産業の功罪 新海誠監督が選択したラストの意図を考える

    記事は『天気の子』のネタバレを含みます。 無学なりにを読んでいると「ハレとケ」という民俗学の言葉にしばしば出会う。柳田國男によって見出された概念で、ハレとは儀式や祭の特別な日、ケとは日常を意味する、らしい。歌舞音曲、芸能は言うまでもなくハレに属するもので、つまり今日、政治や経済を動かすまでに成長したエンターテインメント産業はいわば「ハレ」が産業化された姿であるわけだ。 新海誠監督の最新作劇場アニメ映画天気の子』では、どんな天気も局地的に「ハレ」に変えることのできる少女、100%の晴れ女がヒロインとして登場する。映画は序盤に地方から家出してきた少年が東京で仕事にありつけず、あっという間に貧困化していく描写の後にヒロインを登場させ、この社会の中で彼女が瞬く間に人々から必要とされ、経済的、社会的に成功していく様子を描く。雨の中で描かれる無力な少年の貧困と、新海誠作品が得意とする、息をのむ

    『天気の子』が映すエンターテインメント産業の功罪 新海誠監督が選択したラストの意図を考える