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ブックマーク / realsound.jp (105)

  • 山崎まどかの『一度きりの大泉の話』評:萩尾望都が竹宮惠子に向けていた眼差しとその痛み

    1970年から1972年まで竹宮惠子と萩尾望都が同居し、そこに同世代の少女マンガ家「花の24年組」を中心とするメンバーが出入りして「大泉サロン」と呼ばれた借家。それは少年マンガにおける「トキワ荘」と並ぶ、少女マンガ文化におけるひとつの伝説だった。 萩尾望都の側から見た残酷な事実 『少年の名はジルベール』(小学館) 竹宮惠子が自伝『少年の名はジルベール』(小学館/2016)で「大泉サロン」時代の話を書くと、この伝説には新たなベクトルが加わり、より神話性が強まっていった。接近し過ぎた若い創作者同士の思わぬ齟齬。竹宮惠子はそれを天才・萩尾望都への自分の一方的な嫉妬として描いている。 萩尾望都の語り下ろしである『一度きりの大泉の話』(河出書房新社)は『少年の名はジルベール』そのものというよりも、竹宮のに対する反響で自分が被ったことへの返答として書かれている。これは単体で読む彼女の自伝というよりも

    山崎まどかの『一度きりの大泉の話』評:萩尾望都が竹宮惠子に向けていた眼差しとその痛み
  • 『エヴァンゲリオン』は閉じた作品ではない 観た人を熱狂させる理由を考察

    『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が好調だ。緊急事態宣言の最中、公開初週もレイトショーを控える映画館も多かった中で、公開から1カ月で70億円を突破し、根強い人気を証明した。4月11日には庵野秀明総監督の舞台挨拶もあり、これをきっかけにさらに興行収入を伸ばすのではないだろうか。 一方で『エヴァンゲリオン』を鑑賞したくても、そのハードルが存在するのも、また事実だろう。テレビシリーズ26話、漫画作品、ゲーム作品、さらに劇場版もいくつもあり、どこから観ればいいのかわからない、今さら誰かに聞くことができないという方もいるはずだ。今回はそんな方々に向けて、簡単なガイドとなることができれば幸いだ。 結論から述べると、今回の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を鑑賞するためには、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』から始まる『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズを鑑賞すれば、何も問題がない。1作あたり2時間弱の作品を

    『エヴァンゲリオン』は閉じた作品ではない 観た人を熱狂させる理由を考察
  • 庵野秀明に実写を撮らせた男、甘木モリオが語るプロデューサーの資質「嫌われる覚悟が必要」

    スペースシャワーTVの高根順次プロデューサーによるインタビュー連載「映画業界のキーマン直撃!!」第7回には、『シン・ゴジラ』の製作を手がけたプロダクション、株式会社シネバザールにて代表取締役を務める甘木モリオ氏が登場。『平成ガメラ三部作』や『ラブ&ポップ』、『パコと魔法の絵』『20世紀少年』『太平洋の奇跡』『監督失格』『私の奴隷になりなさい』『へルタースケルター』など、数多くの邦画をプロデュースしてきた同氏に、映画製作において大切にしていることや、プロデューサーという仕事の特殊性、その哲学まで、じっくりと話を聞いた。(編集部) 映画は必ずしも監督だけのものじゃない ーー甘木さんは、どんな風にして映画業界に入ったのでしょう。 甘木:地元の福岡の高校を卒業してすぐ、今村昌平さんが校長を務める日映画大学(当時は横浜放送映画専門学院)に入学して、2年間過ごしましたが、ほとんど学校は行ってません

    庵野秀明に実写を撮らせた男、甘木モリオが語るプロデューサーの資質「嫌われる覚悟が必要」
  • 『シン・エヴァ』舞台にもなった宇部市、2045年はどうなる? 『ガンダム』SF考証家が描く、XRが一般化した未来

    『シン・エヴァ』舞台にもなった宇部市、2045年はどうなる? 『ガンダムSF考証家が描く、XRが一般化した未来 今、行ってみたい街を尋ねたら、少なくない人が山口県宇部市と答えるのではないだろうか。25年前に始まったシリーズのラストを飾る映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』に登場するからだ。 3月22日にNHKで放送された『プロフェッショナル 仕事の流儀 庵野秀明スペシャル』の冒頭。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の庵野秀明総監督が、スマートフォン手に階段を駆け上る場面が登場した。場所は、山口県宇部市にある宇部新川駅。ここが、映画の重要なシーンに登場して、自分でも立ってみたいと思わせる。 宇部市は庵野監督が生まれ育った街だ。『王立宇宙軍 オネアミスの翼』や『ふしぎの海のナディア』といった作品に関わり、1995年放送の『新世紀エヴァンゲリオン』で国民的な認知を得た今も、宇部市には強い思い入れ

    『シン・エヴァ』舞台にもなった宇部市、2045年はどうなる? 『ガンダム』SF考証家が描く、XRが一般化した未来
  • 『エヴァンゲリオン』を実写パートから考える 旧劇場版と新劇場版の“虚構”と“現実”

    稿は『シン・エヴァンゲリオン劇場版』と『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを君に』の内容、いわゆるネタバレに触れております。ご了承ください。 『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が公開された今、改めて2006年に庵野秀明総監督が書いた『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』所信表明を読むと、その志がぶれていないことに驚く。特に目を引くのが「「エヴァンゲリオン」という映像作品は、様々な願いで作られています。(中略)現実世界で生きていく心の強さを持ち続けたい、という願い。」の部分だ。 その前年に刊行された漫画『監督不行届』の解説で庵野は、著者であり自身のでもある安野モヨコの作風を「マンガを読んで現実に還る時に読者の中にエネルギーが残るようなマンガ(中略)『エヴァ』で自分が最後までできなかったこと」と評している。 作品という虚構から現実世界に還り、そこで生きていく強さ。 テレビシリーズおよびそ

    『エヴァンゲリオン』を実写パートから考える 旧劇場版と新劇場版の“虚構”と“現実”
  • 土屋太鳳×福原遥×工藤阿須加、吉浦康裕監督の長編アニメ映画『アイの歌声を聴かせて』出演へ

    コメント 土屋太鳳(シオン役) 主人公のシオンは、相手がどうすれば幸せになるのかを気遣う優しさも持っていて、素敵な子だと思います。 私自身にとって大切な役になるだろうという予感がありました。だから選んでいただけたときは嬉しい気持ちでいっぱいでした。 吉浦監督が「誰でも幸せにしてしまうシオンの健気さを大切にしたい」とおっしゃっていて、「寂しい気持ちのときも、明るくしゃべってほしい」というディレクションを受けたことが印象的でした。 私は母から「大切なものを大切にできないと、大切な人も大切にできない」と教わったことがあって、『アイの歌声を聴かせて』はその言葉を思い出させてくれる作品でした。人と人の繋がりや、想いを伝えることの尊さを実感できて、皆さんに力を与えてくれる作品になっています。そういった気持ちが伝わってもらえたら嬉しいです。 劇中楽曲「ユー・ニード・ア・フレンド ~あなたには友達が要る~

    土屋太鳳×福原遥×工藤阿須加、吉浦康裕監督の長編アニメ映画『アイの歌声を聴かせて』出演へ
  • ディズニーにとっては因果応報? 『ラーヤと龍の王国』の悲劇

    先週末の動員ランキングは、3月8日に超イレギュラーな月曜公開となった『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が週末まで引き続き好調で、土日2日間の動員76万1000人、興収11億7700万円を記録して初登場1位となった。初日から7日間の累計は動員219万4533人、興収33億3842万2400円。最終興収53億円を記録したシリーズ前作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』のオープニング7日間との比較では動員133.6%、興収145.1%という数字だ。もちろん大ヒットは大ヒットなのだが、このままロングヒットの気流に乗るかどうかは、21日までと言われている首都圏1都3県の緊急事態宣言解除の影響、春休み興行による上増し及びその対抗馬など、複数の要素が複雑に絡んでくるだろう。 『シン・エヴァンゲリオン劇場版』に関しては、現状、どのメディアも企画書と原稿チェックなしでは作品のメインビジュアルを借りることもできず(

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  • 『呪術廻戦』はさまざまな意味で“革新的”な作品に 釘崎野薔薇の異色なヒロイン像

    現在『週刊少年ジャンプ』で連載中、芥見下々原作のアニメ『呪術廻戦』(MBS/TBS系)。3月26日に放送された第24話「共犯」では、血塗と壊相が虎杖悠仁と釘崎野薔薇を追い詰めるなか、2人はコンビネーション技を繰り出して敵を一掃する。 『呪術廻戦』公式サイトより引用 半年間続いてきたアニメ『呪術廻戦』もこのエピソードが最終話。これまでMAPPAはその類稀なるアクション描写とキャラクターデザインで原作ファンはもちろん、アニメから作を知ったという人も、とにかく観るもの全てを魅了してきた。天井知らずに毎話ごと進化していくそのクオリティは、最終話でも健在。これまでも戦闘シーンとBGMの組み合わせが痛快な場面はいくつもあったが、今回のように虎杖と釘崎のコンビネーションをcoldrainのMasatoが歌う挿入歌「REMEMBER」の音楽に合わせて描くというのは初の試みだった。まさに、最終回らしいスペ

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  • 『DAU. ナターシャ』新場面写真公開 ソ連秘密研究施設を再現したセットの数々が

    2021年2月27日公開の映画『DAU. ナターシャ』より、新たな場面写真が公開された。 ロシアの奇才イリヤ・フルジャノフスキーは処女作『4』が各国の映画祭で絶賛を浴びると、“史上最も狂った映画撮影”と呼ばれたプロジェクトに着手。それは、いまや忘れられつつある“ソヴィエト連邦”の記憶を呼び起こすために、“ソ連全体主義”の社会を完全に再現するという前代未聞の試みだった。オーディション人数約40万人、衣装4万着、欧州史上最大の1万2千平米のセット、主要キャスト400人、エキストラ1万人、撮影期間40カ月、35mmフィルム撮影のフッテージ700時間……莫大な費用と15年もの歳月をかけて完成させた。 作は、その膨大なフッテージから創出された映画化第1弾であり、ランダウが勤めていた物理工学研究所に併設されたカフェのウェイトレス、ナターシャが主人公となる。作でスカウトされた新人ナターリヤ ・ベレ

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  • 大塚英志が語る、日本の大衆文化の通史を描く意義 「はみ出し者こそが権力に吸収されやすい」

    太平記から漫画、模型、アニメ、ボーカロイドまで、日の大衆文化の通史を一冊ので描き切った日文研大衆文化研究プロジェクトによる書籍『日大衆文化史』(KADOKAWA)。 大塚英志氏 このでは、漫画の鳥獣戯画起源論など、現代の日文化が中世や近世にルーツを持つとする説は、戦時下に政治的に必要とされて「創られた伝統」だと退けた上で、それとは別に一貫して存在してきた運動を描いていく。 「お約束」や共通前提(歌舞伎でいう「世界」)を踏まえながら新要素(同じく歌舞伎でいう「趣向」)を入れて作品が生み出されていくという、二次創作的とも言える仕組みこそが「文化」であり、それは有象無象の大衆=民俗学者の柳田國男がいう「群れとしての作者」が担ってきた、という見立てのもとで見えてきた「日」「大衆」文化史の姿とは――主筆を務めた国際日文化研究センター教授・大塚英志氏に訊いた。 『日大衆文化史』は通史を

    大塚英志が語る、日本の大衆文化の通史を描く意義 「はみ出し者こそが権力に吸収されやすい」
  • 『千と千尋の神隠し』はいかにして興行収入300億円を突破した? 公開当時を振り返る

    ここ数週間、ネット上を含めたメディア各種でアニメ映画『千と千尋の神隠し』(2001年)のタイトルを目にすることが多い。言うまでもなく、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」(2020年)の大ヒットぶりに絡めてである。映画を観に訪れた観客が、興行側に払うお金(前売り券、当日券を問わない映画鑑賞券)の合計金額を興行収入と呼ぶが、日国内における歴代興行収入作品の第1位は、目下『千と千尋の神隠し』の308億円だ。この映画はなぜそこまでの興行成績をあげられたのだろうか? この機会に公開当時の情勢を絡めながら振り返ってみたい。 改めて情報を整理しよう。『千と千尋の神隠し』は、『天空の城ラピュタ』(1986年)より始まったスタジオジブリ制作の長編アニメ第11作目で、原作・脚・監督の3役を宮崎駿が兼任。2001年7月に日で公開されて大ヒットし、同年さまざまな国内の映画賞を受賞。翌2002年には日アカデミ

    『千と千尋の神隠し』はいかにして興行収入300億円を突破した? 公開当時を振り返る
  • 殺人鬼カップルのメチャクチャさについていけない! 『ハネムーン・キラーズ』と『地獄愛』

    あけましておめでとうございます。年始から殺人の話で恐縮ですが、今回はアメリカの犯罪史に残る殺人鬼カップルを扱った映画をご紹介しようと思います。 殺人鬼といえば単独犯のイメージが強いですが、なかなかどうして、夫婦やカップルで殺っちゃう例も少なくありません。現代の日でも年に1回は男女コンビが事件を起こしている印象があります。今回ご紹介する殺人鬼もカップルなのですが、これがちょっと特殊な関係にあります。 2人の殺人鬼……伊達男のレイと、中年女性マーサは雑誌の文通コーナーで知り合いました。手紙を送り合うこと数回、遂に2人は結ばれます。しかし、レイは寂しい女性を狙う結婚詐欺師だったのです。もちろんマーサもカモの1人。これほど最悪の出会いもないと思いますが、ところが人間とは不思議なもので、2人は当に愛し合ってしまいます。レイは結婚詐欺を続け、マーサは彼の仕事を手伝います。しかし、マーサはレイが他の

    殺人鬼カップルのメチャクチャさについていけない! 『ハネムーン・キラーズ』と『地獄愛』
  • “おジャ魔女世代”の問題を描いた本来の続編に? 『魔女見習いをさがして』に仕掛けられた“魔法”

    日曜朝の枠で、1999年から2003年までテレビ朝日系で放送していた、魔法少女アニメ『おジャ魔女どれみ』シリーズ。当時の3歳から8歳の女児を対象に、多くの視聴者の心に残っている作品だ。作『魔女見習いをさがして』は、そんなTVシリーズを当時鑑賞していた人々に向けたアニメーション映画である。 面白いのは、主人公がどれみたちではなく、『おジャ魔女どれみ』の放送を子どもの頃に観ていた20代女性たち3人であるということ。それぞれ、27歳のキャリアウーマン、22歳の大学4年生、20歳のフリーターと、年齢も境遇も生活水準も生活圏も異なるキャラクターが、アニメーションで表現されている。ちなみに、この年齢差は4年続いた最初のシリーズを8歳で観ていた場合と、最後のシリーズを3歳で観ていた場合の視聴者から割り出した“おジャ魔女世代”の幅だという。 主人公たちは、仕事、家庭、恋愛など、それぞれに人生の課題に直面

    “おジャ魔女世代”の問題を描いた本来の続編に? 『魔女見習いをさがして』に仕掛けられた“魔法”
  • 空前の『鬼滅の刃』現象 映画興行は「なりふりかまわない」新基準へ

    今週ほどこのコラムが書きにくい週はない。全国各シネコンの公開初日の異常なまでのスクリーン割り多さが明らかになった先週半ば以降、ソーシャルメディア→ウェブメディア→テレビという順番で、あらゆるところで話題の中心となっている『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の爆発的ヒット。今さら数字を上げるのも躊躇われるが一応。10月16日に公開された同作の初日金曜日の動員は91万507人、興収は12億6872万4700円。土日2日間の動員は251万人、興収は33億5400万円。オープニング3日間の動員は342万493人、興収46億2311万7450円。いずれも2位以下を大きく引き離して、歴代1位となる空前の初動成績を打ち立てた。 この数字は、先週末2位に初登場した『夜明けを信じて。』の約25倍。今年公開された『コンフィデンスマンJP プリンセス編』、『映画ドラえもん のび太の新恐竜』、『事故物件 恐い間取り』

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    akakiTysqe
    akakiTysqe 2020/10/23
    生殺与奪の権を、シネコンに握らせるな!
  • アニメ版『はめふら』、原作ファンも虜にする魅力 メディアミックス成功のポイントは?

    今期アニメの“伏兵”として快進撃を続けているのが、『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』、通称『はめふら』だ。放映前の注目度はさほど高くなかった作だが、アニメの第1話が評判を呼び、以後人気が爆発。これにともない、山口悟による原作小説も注目を集め、4月発売の最新刊9巻のみならず既刊の売上も好調と、大旋風を巻き起こしている。 『はめふら』はオンライン小説投稿サイト「小説家になろう」に連載後、2015年に一迅社文庫アイリスから商業出版され、3巻以降は書き下ろしとして継続中のシリーズである。今や女性向けネット小説の人気ジャンルとして定着した「悪役令嬢もの」を決定づけた作品の一つであり、これまでに9巻が刊行された。さらに、小説の挿絵担当のひだかなみによる漫画化も進められ、コミックスは第4巻まで発売。クオリティの高いコミカライズは好評を博し、『はめふら』の人気を後押しする。こ

    アニメ版『はめふら』、原作ファンも虜にする魅力 メディアミックス成功のポイントは?
  • 伊藤沙莉の浅草氏は最高だ! 『映像研には手を出すな!』没入に誘うハスキーボイス

    深夜に放送されているアニメ『映像研には手を出すな!』(NHK総合)に毎週目を潤ませてばかりである。アニメ製作に没頭する女子高生3人組、浅草みどり(伊藤沙莉)・金森さやか(田村睦心)・水崎ツバメ(松岡美里)と、その情熱に感化されるように増えていく仲間たち。 彼らの想像の中の「最強の世界」が、画面の中を自由自在に飛び回り、溢れ出し、試行錯誤の末に形になっていこうとする過程は、同じように映像製作に心を燃やしたかつての若者たち、『月刊!スピリッツ』(小学館)で連載中の大童澄瞳による原作ファンだけでなく、なんとなく見始めた視聴者の目も釘づけにし、心を震わせずにはいられない。 『映像研には手を出すな!』の初回冒頭は、まだ彼女特有のファッションと口調という個性を身につけていない幼いヒロイン・浅草みどりが、宮崎駿が手がけた『未来少年コナン』を思わせる『残され島のコナン』に魅了されるまでが描かれている。まだ

    伊藤沙莉の浅草氏は最高だ! 『映像研には手を出すな!』没入に誘うハスキーボイス
  • 人は抑圧にどう立ち向かうのか? 『ロニートとエスティ』ラストシーンが象徴する現代的なテーマ

    セバスティアン・レリオの前作『ナチュラルウーマン』では、文字通りの「逆風」に立ち向かう女性が鮮烈に映し出されていたが、作『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』もまた、そうした「逆風」に立ち向かう女性(たち)が中心に据えられている。彼女たちは何に立ち向かっているのか? それは抑圧であり、慣習であり、権威であり、その象徴としての「父」である。 同性愛と宗教の相克は多くの文学や映画が提示してきたものだが、作はむしろ、宗教に限らない父権なるものとの対峙を見据えているように思える。原作はイギリス人女性作家のナオミ・オルダーマンの自伝的小説であり、彼女がのちに発表した小説『パワー』において、女性が男性を「支配」することになったディストピアを描きつつジェンダーによる支配/被支配の構造を浮かび上がらせていた点とも、通じる主題だと言えるだろう。 舞台となっているのはイギリスの「超正統派」と呼ばれる厳格な

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  • ポストジブリという問題設定の変容、女性作家の躍進 2010年代のアニメ映画を振り返る評論家座談会【後編】

    年が明け2020年に突入。同時に2010年代という時代も終わりを迎えたリアルサウンド映画部では、この10年間のアニメーション映画を振り返るために、レギュラー執筆陣より、アニメ評論家の藤津亮太氏、映画ライターの杉穂高氏、批評家・跡見学園女子大学文学部専任講師の渡邉大輔氏を迎えて、座談会を開催。10年代を代表するアニメーション作家をトピックに語り合ってもらった。 細田守や新海誠をはじめとするアニメーション監督に注目した前編に続き、後編では、「ポスト宮崎駿」をめぐる議論の変容や女性作家の躍進、SNSとアニメーションの関係性について語り合った。 ポストジブリという問題設定の時代 宮崎駿監督『風立ちぬ』 渡邉大輔(以下、渡邉):「ポストジブリ」「ポスト宮崎」という問題設定がいまでもしばしばなされますが、僕自身はこんな見立てを持っているんです。おそらくそれに関しては、2010年代の前半と後半で、アニ

    ポストジブリという問題設定の変容、女性作家の躍進 2010年代のアニメ映画を振り返る評論家座談会【後編】
    akakiTysqe
    akakiTysqe 2020/01/14
    https://twitter.com/ogawab/status/1216919502689955840?s=21 ビジネスとしてジブリなきあとを考えることと、世間の好みの動向を語ることと、アニメの流れを見つめることは本来別物のはずだhttps://twitter.com/ogawab/status/1216919925995950080?s=21
  • アニメ『クズの本懐』第3話で描かれたリアルな同性愛 ファンタジー的な百合描写とはどう違う?

    フジテレビ・ノイタミナ枠で放送中のアニメ、『クズの懐』。原作者の横槍メンゴは、もともと成人向け漫画を手がけていたこともあって、原作漫画でもかなり過激な描写が多い。そのため、アニメでもある程度は攻めてくるだろうと覚悟して放送に臨んだのだが、第1話冒頭から濃厚なキスシーンが炸裂したものだから、思わず面らってしまった。さらに、先日放送された第3話では、主人公・花火と、花火の親友・早苗(えっちゃん)の女性同士の絡みも描かれ、一層ハラハラする展開となった。 第3話の予告が公開された時点で、ネット上では「レズの懐」と揶揄されたり、いわゆる「百合」展開をもてはやすような声が散見された。しかし、作で描かれている花火と早苗の関係は、これまでの地上波放送のアニメで頻繁に見受けられた百合描写とは、大きく異なる手法で描かれているように感じた。 そもそも、アニメや漫画のジャンルとしてしばしば使用される「百合

    アニメ『クズの本懐』第3話で描かれたリアルな同性愛 ファンタジー的な百合描写とはどう違う?
  • 細田守と新海誠は、“国民的作家”として対照的な方向へ 2010年代のアニメ映画を振り返る評論家座談会【前編】

    細田守と新海誠は、“国民的作家”として対照的な方向へ 2010年代のアニメ映画を振り返る評論家座談会【前編】 年が明け2020年に突入。同時に2010年代という時代も終わりを迎えた。リアルサウンド映画部では、この10年間のアニメーション映画を振り返るために、レギュラー執筆陣より、アニメ評論家の藤津亮太氏、映画ライターの杉穂高氏、批評家・跡見学園女子大学文学部専任講師の渡邉大輔氏を迎えて、座談会を開催。 前編では、細田守や新海誠など、今や国民的作家となったアニメーション監督に注目。なお、後日公開予定の後編では、「ポスト宮崎駿」をめぐる議論の変容や女性作家の躍進、SNSとアニメーションの関係性について語り合っている。(編集部) 最初の地殻変動は2012年 ――2014年に『アナと雪の女王』と2016年に『君の名は。』と、2010年代に入ってから、興行収入が200億を超える作品が出てくるように

    細田守と新海誠は、“国民的作家”として対照的な方向へ 2010年代のアニメ映画を振り返る評論家座談会【前編】