かつて橋本治は女子高生だった。その後、光源氏になったり『平家物語』という名の日本上古史になったりいろいろしたけど、1970年代には桃尻娘だった。だから誰よりも的確に少女マンガをキャッチしていた。当時、オタクという言葉はまだなくて、マンガを評論するのは異例中の異例だったが、女子高生にそんな世間の事情は関係ない。好きだから読む。語る。自分が同化して「そのもの」になってしまう。本書はそのようにして書かれた画期的な少女マンガ評論の古典だ。 取り上げられているのは倉多江美、萩尾望都、大矢ちき、山岸凉子、江口寿史+鴨川つばめ、陸奥A子、土田よしこ、吾妻ひでお、大島弓子。 本書は社会批評としても秀逸だ。たとえば著者は、萩尾望都の『ポーの一族』を、懐かしい時間への回帰循環の物語とし、閉塞化していく戦後社会と、葬り去られた子供たちへの鎮魂歌だとする。だが挫折しても希望は消えない。少年少女は何度でも挑戦を繰り
