著者本人をモデルとした小学校教師赤尾先生の、学校での奮闘ぶりを描くハートフルな作品で、感動的な小説というのがおそらくは一般的な評価でありましょう。僕も読んでて何度も泣きました。 しかしここからは、あえてこの小説に「描かれなかったもの」についてお話したいと思います。「描かれなかったもの」が「描かれたもの」によって逆照射されたためです。 作品内では、新任の主人公の赤尾先生は教室で起こる様々なトラブルに立ち向かいます。上履きが隠されてしまったこと、競争させない運動、不登校等など。ベテランや先輩の先生に相談しながら、子どもと向き合っていくのです。 実際に小学校教師を経験された乙武さんの教師達の描き方はとてもリアルで、教材研究や授業の綿密な準備等、教師の業務量の多さ、熱心さの息遣いが伝わってきます。 そうした「現場の教師」の奮闘の姿が描かれているわけですが、そうした姿を見れば見るほど、僕は思いました