吉田典史(ジャーナリスト) 【第1回】 2008年12月01日 気がついたら「転籍」に…。 上司が仕掛けた「出向」という罠 ――不本意な転籍を受け入れざるを得なかった佐藤氏のケース しかし、いまとなっては、空しい願いだ。今日、転籍が決まった。もう親会社には戻れない。娘はまだ小学生なのに。収入が3割も減ってしまうなんて。いったい妻にどう話したらいいんだろう――。 佐藤はホテルのベッドに横たわり、その後も考え込んだ。 「出向」と「転籍」の きわどい“からくり” 中堅・大企業は、関連会社を含めたグループ経営を行なっている。かつては、「出向・転籍=左遷」ととらえる向きがあったが、いまは必ずしもそうではない場合がある。特に、業界再編などが急速に進む業界では、出向や転籍は、その社員にとって「勲章」になるときすらある。一方で依然として、社員を排除していく際の有効な手段としても使われている。 本