上京して最初に住んだ街が西荻窪だった。交通の便から中央線沿線でいくつか内見した末、最終的に西荻南の1Rを即決。それは部屋がどうというより、そこに面する「西荻東銀座商店街」ってトンチキな名前が面白いとか、「逆に地元じゃ見ないな」って風情の八百屋、おもちゃ屋が健在だったところを魅力に感じたことが大きかった。 引越した初日はなんと手違いで家財道具が届かず、カーテンも布団もない部屋で独り床寝するハメに。夜が明けると商店街では朝市が始まり、私はお惣菜か何かを手に「今日からこの街にお世話になります」的なことを話し、上京後初めての安心を得た。 東京の一人暮らしなんて、それこそ「ズートピア」みたいな孤独で殴られるはずだろうに、西荻は独特の垢抜けなさでもって私にずいぶん優しくしてくれた。登亭のチキンサラダ、戎ズボンズ遭遇事件、サブカル劇団員の声かけ事案など、私は数々の思い出をしっかり作って1年後に引越し、さ