1 #移民とカルチャー【座談会】なぜ日本には移民文化が「存在しない」のか? ~戦後日本のアイデンティティ問題から考える【前編】 世界的に排外主義やポピュリズムの機運が高まりを見せる2019年の今、移民というイシューは様々な形で浮上している。政治的には極めて緊迫した状況が続く一方、文化的には移民(や移民のルーツを持つ)作家の生み出すアート表現や、彼らとのクロスオーヴァーで創出される表現が幾つもの新しい扉を押し開いている。例えばアメリカのポップ・ミュージックに目を向ければ、ここ数年はヒスパニック系の急激な人口増加に伴い「ラテン・レボリューション」とも呼ばれるラテン・ミュージックのブームが巻き起こっているし、2010年代のポップとなったラップ/ヒップホップは当然ながらアフリカ系アメリカ人が中心となった音楽だ。映画の世界ではキュアロン、デル・トロ、イニャリトゥといったメキシコ出身の監督がハリウッド