宮沢賢治の童話『セロ弾きのゴーシュ』が、藤城清治さんの美しい影絵で絵本になりました。 これがとっても素敵で、子供も何度も繰り返して読んでいます。 これまで、わたしの中のゴーシュは、無骨で、いかつい顔立ちをしていて、その中にちょっと気の弱さを秘めているような、そんな男性でした。 でも、藤城さんの描くゴーシュは、驚くほど今どきの青年の表情をしています。そして、それがとてもぴったりくるのです。 たとえばバンドに打ち込む少年や青年たちの表情の中に、このゴーシュのような表情を見たことがあるような、そんな既視感をおぼえました。 ゴーシュが動物たちにセロを聴かせたり、合奏したりするのは、いつも夜更けから夜明け前です。 その青い光に満ちた時間の美しさといったらありません。 夏の夜、稽古で肌が汗ばむような感覚と、それを涼しいイーハトーブの風で心地よく冷やされていくような感覚を味わえる本です。