東京大学総合図書館にある、96冊の『君拾帖』。普段は地下書庫に仕舞われており「貴重書閲覧室」でしか見られないこのシリーズを、画文家のモリナガ・ヨウさんが写真とイラスト・文章で紹介したのが本書だ。「君拾」(実際は「君」の漢字に手偏がついている)なんて人生で初めて聞く単語であったが、集めて拾うという意味だということで、「君拾帖」とは、要はスクラップブックということだ。 肝心のスクラップは何がすごいのか。貴重書『君拾帖』の著者は、幕末から大正の初めにかけて生き、「博物館」という単語を日本に導入した田中芳男である。伊藤圭介に師事して本草学、蘭学、医学を学び、緒方洪庵から任されて九段坂上の薬草園を管理した。また、幕府一行の一員としてパリ万博に参加し、明治以降もウィーン万博、フィラデルフィア万博に派遣された、国際的な人でもある。それだけではない。日本各地のスルメを紹介する『鯣(スルメ)図解一覧』、『鯣