「明烏」(あけがらす)という落語は、うぶな青年をはじめて遊郭へ連れていくというあらすじで、「エエ、男子と生まれて御婦人のお嫌いな方は御一名もない。御婦人だってそうですな。男がなかった日には、あのくらい詰まらないものはなかろうとおもいますが…」というイントロダクションからはじまる。このように決めつけてしまうと、ブロークバック・マウンテン方面からの反論もあるだろうから、「男子と生まれて御婦人のお嫌いな方は御一名もない」はいささか適切さに欠ける。しかしまあ、そこは大意として、「誰にだって欲望はある、それを肯定しよう」ととらえてほしい。「明烏」は、欲望を積極的に肯定していこうとする物語である。 考えてみれば、「欲望を肯定する」というのは、わりあいにむずかしい問題である。「明烏」がそうであるように、まさしく男女の関係は欲望のやりとりであり、ゆえにその取り扱いがむずかしい。欲望をあからさまにするのはど