キャスリン・ビグロー監督作『ゼロ・ダーク・サーティ』について書く。 しかしその前に前作『ハート・ロッカー』について書かないといけないだろう。 『ハート・ロッカー』は、「リアルにイラク戦争を描いた戦争アクション、社会派ドラマ」というのが一般的な認識のようである。 しかしながらこの映画は、アカデミー賞を競った『アバター』にも負けないほどの「ファンタジー映画」であった。 それはなぜか。 『ハート・ロッカー』は、イラク人を「人間」としてきちんと描いていない。そもそも、アメリカ側の視点でのみ描いているので、イラク人が主要な役で登場しない。 さらに重要なことには、この映画では、イラク戦争における「アメリカに都合の悪いこと」が注意深く排除されている。 イラクにおいては、民間人(軍人ではない)が120万人以上殺害されていると言われている。多くは「誤爆」と言われるものである。また、ブライアン・デ・パルマ監督