ロシア連邦最南端のダゲスタンは、カスピ海西岸に位置する小さな共和国。その第2の都市デルベントの歴史は2千年とも5千年ともいわれ、2003年には世界遺産に登録された。 ああ、それなのに──2015年に欧米からデルベントを訪れた観光客の数は十指に余る程度。この町の魅力を知る外国人は、あまりにも少ない。雄大なコーカサスの自然、貴重な古代建築、伝統の綱渡り芸、そして尋常でない「おもてなし精神」を、ロシアの有名旅行ジャーナリストが紹介する。 「あんな危険なところに“旅行”だって!?」 私がダゲスタン共和国に行くと言うと、周囲の人たちは大反対した。その気持ちも、わからないではない。 1999年、隣接するチェチェン共和国の武装勢力が「ロシア支配からの解放」を訴えてダゲスタンに侵攻し、それをきっかけに第二次チェチェン紛争が発生した。以来、ロシアではダゲスタンについてネガティブに報じられるか、あるいは何も報