私はお酒がほとんど飲めない。ビール一杯程度で顔が真っ赤になるし、それ以上飲むと酔うどころか気持ちが悪くなる。そういう体質なのだろう、と思っていたし、「酔う」という感覚を味わったことがなかった。 初めてその感覚を知ったのは、36歳のときだった。歌舞伎町の風林会館という会場を借りたクラブイベントで、誰がおごってくれたのかわからない大量のテキーラのショットが回ってきて、あまりにもその場が楽しかったのでつい2杯ぐらい飲んでしまった。そしたらてきめんに酔った。酔いながら「あ、これが酔うって感覚なんだ」と思った。知り合いに会ってはハグし、知らないダンサーの女の子に「あなた最高! これ飲んで!」ってビールおごったり、普段の自分からは想像もつかないほどオープンマインドになっていて、酒が効きすぎて光はまぶしいし、視界も聴覚も狭まるような感覚があったのだけど、そこに聞き覚えのある音が聞こえてきて「あ、これto