雑誌の「百合」特集で取材を受けた。最近自分の半生を振り返って、私って10〜20代の時何してたんだっけ、何もしてないな、意識でも失っていたのか……?と落ち込んでいたのだが、取材のおかげで、そういえば百合とBLを無限に読んでいたのだ、と思い出した。 当時、百合とBLに耽溺したのは、ヘテロセクシュアル恋愛規範の枠組みがもたらす苦痛からの逃避の意味合いが大きかった。でも同時に、人間の分かり合えなさと存在の心許なさが、「恋愛」を通じて描かれることに魅力も感じていたんだろうなとも今さら気づいた。恋愛小説が好きだからこそ、百合とBLを読んでいたのだ。 『カンバセーションズ・ウィズ・フレンズ』は百合でもBLでもない。しかし、世間で当たり前とされてきたものーー1対1のパートナーシップに基づく恋愛規範、家父長制に紐づいた「家族」という共同体、後期資本主義に支えられた上昇志向ーーへの疑念を持ちながらも、それらを